一日に数本だけ電車が停まるちいさな田舎駅から、山道を歩く事30分。そろそろ疲れはじめたころ、傾斜した白い壁に、黒い屋根がフワリと乗った不思議な建物が目の前に現れます。
ロンシャンの礼拝堂はル・コルビジェ後期の作品であり、サヴォア邸に代表される、それまでの作品とは一線を画す独特の造形をしています。
鉄筋コンクリート造でありながら、周囲の自然環境と見事に共鳴し、あたかも、その一部であるかのように産み出される、穏やかな空気に心を打たれました。
礼拝堂を眺めながらぼんやり食べた、フツーのサンドイッチのうまかった事。
健やかな気持ちで、足取り軽く、山を降りました。
もう20年以上前に同じ道をたどり、霧の中から現れたのを思い出します。坂の下のお店はまだあるのだろうか。
そうでしたか!
駅から礼拝堂まで、この20年以内にできたものは無さそうだったので、きっと全て当時のままではないでしょうか。
坂の下には、地味なパン屋が一件、ひっそりと佇んでいました。